Grandiosoとは
Grandioso(グランディオーソ)は音楽用語で「壮大に」という意味です。この世界が空想だからこそ、自由でどこまでも大きく広がっていくように願い名付けられました。…というのは半分嘘で、実際のところ、音楽の教科書の音楽用語一覧で見つけて、とてもカッコよかったからです。中学1年生の頃の話です。
Grandiosoはタイトルで、世界の名前そのものは「ノア」と言いました。失敗した絵をくしゃりと丸めて捨てるようにノアが死に、新しい紙に絵を描くようにノアが生まれる。何度も何度も生まれ変わってきた世界です。
ノアにはウィルヘンという創造主がいました。彼の生み出す世界は曖昧で、長く続くことなく終焉に向かいます。生み出した世界に直接干渉できない自分の代わりに、ロゼット・ウィルヘンという星屑の使者を遣わして、ノアに安寧をもたらそうとしていました。一方で、ノアに生きる人々は、ゆるやかに滅んでいく世界の中で抗います。様々な世界で、様々に抗っている人々を描いたものが、Grandiosoでした。
この繰り返される世界の中に、決して結ばれない運命の2人がおります。2人は必ず惹かれあいますが、同時に必ず永久の別れを迎えてしまいます。ロゼット・ウィルヘンは彼らを救おうとしますが、星屑の身ではただ見守ることしかできませんでした。
最後のノアは、剣と魔法のファンタジー。「ノア」という勇者の少年が、仲間たちを引き連れて、大樹に飲み込まれる運命を予言された王国を救う…そんなポピュラーな冒険譚。この世界に、アレグヴィルンという炎を司るドラゴンと、シャルローゼというお姫様がいました。
この世界の太陽と月は、無作為に選ばれた人間が継承していくものでした。選ばれてしまった人間はそれまでの記憶を失い、太陽もしくは月を司る存在として生きる仕組みです。王国のお姫様シャルローゼは不幸にも、月を司るヴィ・アルスとして選ばれてしまいます。
それを悲しんだドラゴンは、ヴィ・アルスになったお姫様を救うため、炎を司る役目を捨てて夜空を目指します。不安定になってしまった炎によって世界は更に終焉へ拍車をかけてしまう…そんな一幕がありました。
結論から言うと、この物語では王国を救うことはできません。勇者ノア自身が大樹になることで世界を飲み込んで終わりを迎えます。しかし、記憶を取り戻したシャルローゼと、彼女を救い出したアレグヴィルンを、星屑のロゼット・ウィルヘンが見つけ出します。運命の2人はついに結ばれ、次のノアのアダムとイヴとなりました。
2人が楽園に辿り着くと、創造主ウィルヘンは眠りにつき、ようやく世界がはじまる…
世界が真に創造されるまでの、長い長い愛の物語だったのです。
では今描かれている世界は、繰り返されているノアの1つか?それとも楽園のノアか?
実はどちらでもありません。
創造主ウィルヘンの生み出すノアは、文字通り紙の上となりました。
そして絵描きウィルヘンが生きるノアこそが、これからお話する世界になります。
ノアとは
暗闇の中に浮かぶ海がひとつ。その海に浮かぶ大陸がひとつ。
大陸には国がひとつ。大陸の底にも国がひとつ。
海には果てがあり、「果ての先」へ行った人間は帰ってくることはありません。大陸の国は様々な領によって形成されており、領主により管理をされていますが、皆共通してただ一人の「王様」に敬意を表します。大陸の底は死の国で、死んだ命が土から沈んで辿り着く場所です。
その国は遠い昔、強い力を持った存在から恵みを受けて生活しておりました。綺麗な水が欲しければ水を司る精霊とされている生き物に頼み、分けてもらう。たくさんのリンゴがなる木があるので、みんなで貰いに行くような仕組みです。
しかし、ある時炎を司る精霊、アレグヴィルンが役目を放棄したことをきっかけに、水・森・雷など全ての力が分散されました。今は精霊の遺産として、炎や水、草木や雷が物に宿っている…と認識されています。たとえば、マッチに火をつける原理も、「精霊を呼び起こす動作」と解釈されます。
当時存在していた「強い力を持った存在」の生き物であった精霊たちは、その時に姿を消し、彼らは「神話の中の生き物」として記録に残るのみです。現在は基本的に、この世界で言葉・文化を持つものは人間のみ、と考えられています。