ある世界では、終わりを迎えるときに一人の人間がひとつの大樹になります。
はじめは自分が大樹と知りません。肌はかたく乾き足は幹をつくり髪がしなやかな葉となってようやくわかります。
彼の者からのびる根は地上のすべてに伸び、彼の者からそだつ葉は空を覆う翼となり、
やがて大樹が世界を余すところなく飲み込んだ時ようやく、終焉を迎えることができるのです。
そうすれば、あとはやりなおすだけ。夜空は大樹を軸にして、新しい世界を作り直していきます。以前の世界の良くないところを正して。例えば、前は1つの炎がすべてを食べつくしたから、次は人に火を与えないでしょう。
そう、これは大樹のひとつ。新しい世界は一通り作り終わりましたから、もう用済みでしょう。軸を採取してきました。なに、崩れたら植えればいいのです。
朝が来て彼が目覚めたとき、この器はどう姿を変えてゆくのでしょうか。
ノア、君への好奇心は尽きない。
(2015/06/09)